Pre-Ph.D.試験申請までの道のり

インドでヨーガの博士課程

はじめに

再びインドに戻り、皆さんに「久しぶり!ウェルカムバック」と温かく迎えていただき、ほっとしたのも束の間、インドらしい“洗礼”をしっかり受けています(笑)。

今回は、Ph.D.課程における Pre-Ph.D.試験申請までの道のり を、備忘録として残しておきたいと思います。

Pre-Ph.D.試験とは

Ph.D.試験とは、アーンドラ大学の博士課程において必須とされているもので、入学からおよそ7か月後に受験資格が得られます。試験内容は、研究計画(プロポーザル)のプレゼンテーションと、各専門分野に関する筆記試験で構成されています。この試験に合格することで、正式に本格的な研究活動へと進むことが認められます。

Pre-Ph.D.試験の日程

通常、Pre-Ph.D.試験は年2回(6月と10月)に実施されます。しかし本年度は、アーンドラ大学における学長交代の影響で6月の試験が延期となり、10月のみの実施となりました。

その通知を受け取ったのは、私が日本に滞在していた8月のことでした。急いでオンラインで申請を行い、そこから一連の手続きが始まることになりました。

一筋縄ではいかないインドの申請

オンライン申請を終えて一息ついたのも束の間、その後の通知には「留学生もABC ID(Academic Bank of Credits ID)が必須」と記載されていました。

ABC IDとは、インド政府が導入した学生用デジタルIDで、学歴や単位を一元的に管理するシステムです。今年から留学生も取得が義務化されました。

しかし、取得にはインドの住民票にあたるAadhaarカードが必要であり、留学生が個人で申請することはほぼ不可能です。そのため大学のコンピューター・センターを通じて一括申請する方法が取られました。私はちょうど日本に滞在中であったため、インドの友人に代わりに担当部署へ足を運んでもらい、必要書類を遠隔でリアルタイムに準備するという緊張感のある手続きを経験しました。パスポートの前後6ページのコピーを含む多くの書類の提出が完了。その後「2〜3日で発行」と言われていたものの、実際には3週間を要しました。これがインドの平常運転です。

もちろん、ここで終わらないのがインド

そうこうしているうちに、9月19日の夜、学長からの通達が届き「9月20日がオンライン申請の最終締め切り」と告げられました。ABC IDの取得がちょうど20日となったため、なんとかその日に取得を終え、ようやくオンライン申請の完了に漕ぎ着けました。ほっと胸をなで下ろしたのも束の間、ここからが本当の試練の始まりでした。

オンラインで完結するかと思った手続きも、最終的には多数の「紙の書類」へと姿を変えます。申請書の印刷と署名・押印、試験問題に関する承認印、入学証明書、担当教授による証明書、試験料支払い証明書などを揃える必要がありました。種類の中には2部作成が求められる書類もあり、最終的に必要となった署名と押印は20か所に及びます。これらの締め切りは9月25日です。日曜祝日を考慮するとほんの数日しかありません。

このため、コンピューター・センター、学部長窓口、教務課、学科窓口、さらには印刷所まで、何度も往復することになりました。しかもこの時期は日中は暑く、夕方は雨季。夕方にはレインコートを着てバイクを走らせ、雨の中で書類を抱えながら駆け回る日々が続きました。

教授も大忙し

私の指導教員はヨーガ学科の学科長を務めていますが、2か月ほど前から哲学科の学科長も兼任されることになり、多忙を極めています。さらに、ちょうど哲学科主催のカンファレンスと手続きの時期が重なり、署名をいただくまでに4時間待機することもありました。

ただ、その待ち時間には思いがけない良いこともありました。大学スタッフの皆さんが温かく接してくださり、雑談を交わしたり、ティータイムのコーヒーやサモサを分けてくださったりして、むしろ和やかなひとときを共有することができたのです。

一方で、インドでの申請には細かな規定が多く、修正を求められることもしばしばです。そのたびに振り出しに戻り、再度印刷所に足を運ぶことになりました。印刷所での挨拶の回数も自然と増え、1回目は「Good morning」、2回目は「Good afternoon」、3回目には「Good afternoon again!」という具合です。「あぁ、これがインドだな」と感じつつも、どうにか心を保てているのは、毎朝のメディテーション実習のおかげだと実感しています。

どうにか書類提出完了?!

そして、いよいよ提出締切の前日。学科窓口の担当者から「前日までに提出するように」と急遽告げられ、残された時間はわずか3時間。追加の署名をいただく必要がありましたが、担当教授はその時点でカンファレンスの壇上におられました。どのようにして署名をいただくものかと思案しているうちに、3時間にわたる開会式が終了。教授が昼食会場へ車で移動される直前に、車のボンネットを机にして何とか追加分12か所の署名を得ることができました。

壇上に見える担当教授(右)

その後も、学部窓口と学科窓口で必要書類の解釈に相違があり、混乱する場面がありましたが、最終的には提出を完了することができました。不備がないことを願うばかりです。今回の一連の経験を通じて、11月に予定されているPre-Ph.D.試験は、申請の段階からすでに試練が始まっているのだと改めて実感しました。

おわりに

上記のようなプロセスの背景には、書ききれないほど多くの出来事があります。基本的に忍耐・忍耐・忍耐です。また最終的にどうにかなるだろうという精神が必要です。その中には、進んで他者を助けてくれる人もいれば、人の歩みを妨げようとする人、また支えるべき人もいます。そこには実にさまざまな人間模様が広がっています。

こうした経験を通して、自分の信じる道を歩みながら、私は人生そのものを学んでいるのだと感じます。そしてそれは、哲学としてのヨーガがまさに試される場でもあります。自らの哲学を少しずつ育み、その歩みを深めていければと思います。

本日もお読みいただきありがとうございました。

大学の寮に咲いているコスモスの花

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