留学生とともに歩んだYogandhra2025

インドでヨーガの博士課程

はじめに

6月21日、国際ヨガデー(IYD)に合わせて開催された「Yogandhra-2025」は、インド・アーンドラプラデーシュ州のビシャーカパトナムで歴史的なイベントとなりました。一会場での参加者は約30万人。さらに、アーンドラ大学工学部のグラウンドでは、2万5千人の部族出身の学生が108分間で108回のスーリヤ・ナマスカーラを行い、新たなギネス記録が打ち立てられました。全体で22件の記録がギネスに提出され、AP州政府は50万人の登録参加者全員に証明書を発行すると発表しています。

この規模のイベントを実現するためには、都市全体の協力と並々ならぬ準備が必要でした。道路封鎖や交通規制は数日間続き、市内は常に渋滞状態。インストラクターの育成も急ピッチで進められ、前日午後7時からのミーティング後、そのまま泊まり込みで本番に臨む指導者も多数。参加者も午前3時にバス到着、移動、会場に着いてからはマットの上で仮眠を取る姿も見られました。ビシャーカパトナム中が、ヨーガのために全力を尽くした数週間だったと言えます。

留学生とともに:CYPトレーニング

この1ヶ月、私自身もアーンドラ大学ヨーガ学科の一員として、特に留学生へのCYPトレーニングに力を入れてきました。IDYを通して「国や宗教を越えたヨーガの実践」が象徴される中、多国籍で多宗教な学生たちがIDYに参加する意義は非常に大きいものでした。

集中プログラムの設計と実施

留学生向けには4日間の集中プログラムを実施しました。関心の温度差もあり、最初の登録者数は60名程度でしたが、最終的には200名にまで増加。寮内で夕方の時間帯にクラスを設定することで、より多くの学生が無理なく参加できる環境を整えました。

初日、男子寮では50名、女子寮では30名の学生が集まり、アフリカ・中東・東南アジアからの参加者が共にヨーガを学びました。私は主に男子寮の指導を担当し、宗教的配慮としてマントラなどは使用せず、ヨーガ特有の感覚重視のインストラクションやアウェアネスに焦点を当てた構成としました。実習は非常に好意的な雰囲気の中で進みました。

男子寮での実習

配慮と対応:イスラム教徒の学生との関係を通じて

宗教的背景に配慮する中で、特に印象に残ったのはムスリムの女性の参加でした。グラウンドでの実習では、男性スタッフが出入りする可能性があるため、全身を覆うヒジャーブを着用する必要がありました。私の友人は、私の願いを受け入れてヒジャーブ姿での参加を快諾してくれました。蒸し暑い気候の中でのその姿には、ただ感謝しかありません。

私の横の友人が纏っているのがヒジャーブです。
女子寮での実習

IDY当日の様子

IDY当日は朝3:30に寮にバスが到着。夜中の2:00にはスタッフからモーニングコールが入り、私は学生の引率・点呼・誘導などを担いました。徹夜で準備をしていた真面目な学生たちも多く、時間通りに出発できました。

バスの車内は熱気に包まれ、民族ごとのテンションの違いが際立っていました。ムスリムの友人は、移動中の車内で小さな絨毯を敷き、メッカの方角に向かって礼拝を行っており、その姿からは状況に応じて柔軟に対応してくれていることが伝わり、有り難く感じました。

モーディー首相と直接の対面は叶いませんでしたが、200m先から同じ空間を共有し、CYPを留学生とともに実践できたことは大きな思い出です。モーディー首相とは今後もこの距離を少しずつ近づけていきたいと思います(笑)。

トレーナーとしての責任

私はPh.D.の研究生として、外国人学生90~100人を毎日指導しているという取材記事も出ました。参加した学生たちからは、「今後もぜひ継続して実習に参加したい」といった前向きな声が多く寄せられており、今後も寮内で定期的にヨーガ実習を実施する方向で話が進んでいます。

学生たちが一堂に集まりヨーガを行うことは、心身の健康維持にとどまらず、学生同士の自然な交流の場としても機能しており、社会的な意味合いも大きいとのフィードバックも得られています。

中には、初めて親元を離れて暮らす学生や、経済的な事情から4年間一度も母国に帰ることができない学生もおり、異国の地での生活に不安や孤独を抱えるケースも少なくありません。そうした中で、ヨーガの実習が、それぞれの心の状態や生活背景に寄り添う場となることを願っています。

おわりに

実はイベント期間中に携帯電話を紛失し、警察への届け出やオンラインバンキングの停止処理にも追われました。しかしプログラム中、初めてコミュニケーションをとるアフリカの学生さんたちが励ましてくれたりと新たな交流の機会にもなりました。

そして今、2日後の一時帰国に向けて準備を進めています。この怒涛の1ヶ月を経て、久しぶりの日本への帰国もまた、深く味わえる時間になる気がしています。今年のヨーガ・デーのテーマについてなどもまたの機会にご紹介できればと思います。

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