はじめに
みなさん、こんにちは。さて今回はWHOヨーガ・ガイドライン解説シリーズ第16弾となります。前回に引き続き「ヨーガに関する伝統的なテキスト」を扱います。
第1章 概要
- 1.1 ヨーガ入門
- 1.2 ヨーガの定義
- 1.3 ヨーガの歴史と発展
- 1.4 ヨーガの特徴
- 1.5 伝統的なヨーガの流派/系統
- 1.6 ヨーガに関する伝統的なテキスト(7)
- 1.7 文化的影響
- 1.8 ヨーガの健康効果
- 1.9 ヨーガに関する誤解と事実
今回でようやく1.6ヨーガに関する伝統的なテキストの最終回!となりました。WHO-CC国立ヨーガ研究所のガイドブックによる伝統文献の紹介には以下のA-Lまでが含まれており、この部分だけで記事の7回分がかかりました。ここまで広範なテキストを扱うというインドの本気を感じますね。
- A. パータンジャラ・ヨーガ・スートラ/パタンジャリ・ヨーガ・スートラ/ヨーガ・ダルシャナ
- B. ハタ・ヨーガ・プラディーピカー
- C. ゲーランダ・サンヒター
- D. シッダ・シッダーンタ・パッダティ
- E. ハタ・ラトナーヴァリー
- F. ゴーラクシャ・サンヒター
- G. シヴァ・サンヒター
- H. ヴァーシシュタ・サンヒター
- I. バガヴァッド・ギーター
- J. ウパニシャッド
- K. ヨーガ・ウパニシャッド
- L. ブラフマ・スートラ
1.6 ヨーガに関する伝統的なテキストとして、前回までにその後半部分I. バガヴァッド・ギーター、J. ウパニシャッド、K. ヨーガ・ウパニシャッド、L. ブラフマ・スートラのうちJ. ウパニシャッド、K. ヨーガ・ウパニシャッドについて触れていきました。ここでは最後のL. ブラフマ・スートラについて触れていきます。
L. ブラフマ・スートラ
『ヴェーダーンタ・スートラ』としても知られる『ブラフマ・スートラ』は、ヴェーダーンタ哲学(ニャーナ・プラスターナ/Nyaya Prasthana)の論理的(ニャーナ/Nyaya)出発点を構成しています。
『ブラフマ・スートラ』は、『ウッタラ・ミーマーンサー・スートラ』『シャリーラカ・スートラ』『シャリーラカ・ミーマーンサー・スートラ』としても知られています。ヴァイシュナヴァ学派は『ヴィクシュ・スートラ』と呼びます。『ブラフマ・スートラ』はバーダラーヤナの作とされています。
「スートラ」の言葉は「糸」を意味します。『ブラフマ・スートラ』は、ヴェーダンタのさまざまな教えを論理的かつ一貫した全体像に縫い合わせたものである。「ウパニシャッド」と『バガヴァッド・ギーター』はヴェーダンタの基本的な原典であるのに対し、『ブラフマ・スートラ』はそれらの教えを体系的かつ論理的な順序で提示します。
これらのスートラはまた、カルマと神の役割について議論し、仏教、ジャイナ教、ヨーガ、ニャーヤ、ヴァイシェーシュイカ、シャイヴァ/シヴァ派、シャクタ/シャクティ派、無神論、およびサーンキヤの哲学に関連するさまざまな原則を批判的に取り上げている。
WHO-CC CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA
前回のウパニシャッドを取り上げましたが、ウパニシャッドはその表現が多種多様で、時に一見矛盾するような記述が見られることがあります。バーダラーヤナにより著されたとする『ブラフマ・スートラ』はこれらの問題をすべく、また調和を見出しています。
前々回の記事で、『バガヴァッド・ギーター』、『ウパニシャッド』、『ブラフマー・スートラ』はヒンドゥー教の三大経典であり「プラスターナ・トライー」と呼ばれるということを解説しました。さらに、この3大経典にはそれぞれの特徴があり、『バガヴァッド・ギーター』はスムルティ・プラスターナ(思念の出発点)、『ウパニシャッド』はシュルティ・プラスターナ(啓示の出発点)、『ブラフマー・スートラ』はニャーヤ・プラスターナ(論理の出発点)となります。
『ブラフマ・スートラ』の各章の概要
『ブラフマ・スートラ』は、4つの章(アディヤーヤ)に555のアフォリズム(スートラ)から成り、各章はさらに4つの部分(パーダ)に分かれています。
第I章 サマンヴァヤ(調和)(全134スートラ)
人生の目標である究極の真理(ブラフマン)について述べています。この章には合計134のスートラがあり、それぞれのパーダに31、32、43、28のスートラが含まれています。
第II章 アヴィローダ(非対立)(全157スートラ)
ヴェーダンタ哲学に対する可能な異議を議論し、否定します。この章には合計157のスートラがあり、それぞれのパーダに37、45、53、22のスートラが含まれています。
第III章 サーダナ(手段)(全186スートラ)
究極の解放を達成するためのプロセスについて説明されている。この章には合計186のスートラがあり、それぞれのパーダに27、41、66、52のスートラが含まれています。
第IV章 ファーラ(果実/結果)(全78スートラ)
最終的な解放で達成される状態について述べています。この章には合計78のスートラがあり、それぞれのパーダに19、21、16、22のスートラが含まれています。
WHO-CC CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA
理解度チェック(YCB試験対応)
- プラスターナ・トライーには『ウパニシャッド』『バガヴァッド・ギーター』『__________』が含まれる。Upnishad , Brahmasutra and ……..text are comes under the prasthantrayi?
- A. ラーマーヤナ(Ramayana)
- B. ブラフマ・スートラ(Brahma Sutra)
- C. ハタ・プラディーピカー(Hatha Pradipika)
- D. 上記のどれでもない(None of the above )
おわりに
さて、今回で一つの山場である1.6 ヨーガに関する伝統的なテキストについての解説がひと段落しました。AからLまで12種類の文献紹介がありましたが、最優先はヨーガの理論の柱となる『パタンジャリ・ヨーガ・スートラ』、技法の柱となる『ハタ・プラディーピカー』や『ゲーランダ・サンヒター』が最優先となります。また各文献においてもまず勉強すべき章や節があります。それらはYCB試験のシラバスに提示されています。またそちらについてもご紹介できればと思います。さて、次回からはWHOCCヨーガ・ガイドブックの1章の最後の部分である文化的影響、ヨーガの健康効果、ヨーガに関する誤解と事実に入ります。それでは本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。