第2回.WHOヨーガ・ガイドライン 序文

WHOヨーガ・ガイドライン

はじめに

皆さん、サワディカー/こんにちは。バンコク滞在中の竹内です。こちらバンコクは異例の暑さで1月でも40度を記録しています。気候の急激な変化を感じると、急速に環境問題にも目を向けていかねばと思います。さてさて今月から「WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA」「ヨーガの適切な使用に関する消費者情報」についての解説シリーズが始まりました。今回は第2回目です。

第1回目の記事ついてはこちらから

前回からの続きでさっそく第1章の概要へ進もうと思ったのですが、まず大枠を把握する為にも序章の部分から一緒に見ていきたいと思います。なぜならこの部分はインドで起こるヨーガ改革の中心人物として欠かせない国立ヨーガ研究所の前所長Dr.イーシュヴァラ・バサヴァラッディ氏が寄稿されてみえるからです。まずはその内容を少し解説を加えながら一緒に覗いていきたいと思います。

2023年6月15日引退される直前のDr.イーシュヴァラ・バサヴァラッディ氏とともに

国立ヨーガ研究所前所長 Dr.イーシュヴァラ・バサヴァラッディ氏

まずDr.バサヴァラッディ氏ですが、2005年6月から昨年2023年6月の18年間MDNIYの所長を勤めてみえました。このことはDr.バサヴァラッディ氏のFBにもアップされています。この時期は私自身もインドデリーのIYA本部にいたため、インドの国立ヨーガ研究所を牽引してきた大物が引退する際の大きな動きを肌で感じることとなりました。

ちなみにその後一時的措置として、ヴィクラム・シン氏が所長のポストに就いていましたが、正式な所長のポストへ向けては依然不明確なままです。今年早々に動きがあるのではと思います。

2023年7月9日ヴィクラム・シン氏とともに

WHO共同センターとしてのインド国立ヨーガ研究所(MDNIY)

そんなDr.バサヴァラッディ氏が所長を勤めていたインドの国立ヨーガ研究所/Morararji Desai National Institute of Yoga(MDNIY)は、氏の任期中である2013年4月5日からWHOの伝統補完代替医療分野(ヨーガ)における共同センターに認定されています。

詳しい内容はMDNIY公式ホームページのこちらのページに掲載されています。

主な目的として以下の事柄が挙げられています。

  • 国内外のヨーガに関する情報交換のためのリソースセンター。
  • WHOと協力し、ヨーガの合理的な使用を促進するための基準を作成する。
  • エビデンスに基づいたヨーガの使用を提唱するための教育や実践のための資料の作成。
  • 健康関係の従事者やWHOのフェローなどを対象とした、国内および国際的なレベルで実施されるヨーガの健康増進分野に関する最適化されたトレーニングプログラムの実施。
http://www.yogamdniy.nic.in//Contents.aspx?lsid=3521&lev=1&lid=1535&langid=1

更に言うとここには、ヨーガに関する情報の収集と普及、専門用語、方法、手順の標準化、伝統医療製品や治療法の安全性、品質、治療対効果に関するエビデンスに基づく情報の収集、適切な技術の開発と応用、標準化やその他のサービスの提供、共同研究への参加や、様々な研修プログラムを通じての能力開発などが含まれています。

WHOとの協働の基盤となるインド国内の取り組み

上記に見られるように現在WHOと国立ヨーガ研究所が共通の目的に向かって協働しているわけですが、この目的を達成するための基盤となっているのはインド政府Ayush省、その傘下にあるヨーガ教育委員会/Yoga Certification Board(YCB), 国立ヨーガ研究所(MDNIY)、そして民間のヨーガ自治組織であるインドヨーガ協会/Indian Yoga Association(IYA)を構成する各種ヨーガ機関が一丸となって築き上げてきたヨーガの基準、資料、トレーニング・プログラムなどです。

そしてWHOによるベンチマークの策定や、今回のガイドラインの策定においてWHOを支援/協働する立場として国立ヨーガ研究所(MDNIY)が共同センターに指定されたのです。

よって序章冒頭においても、Dr.バサヴァラッディ氏により

インド政府 Ayush 省国立ヨーガ研究所(MDNIY)のWHO共同センターが、本冊子を通じて、WHO-CC 活動に貢献できることを誇りに思います。

WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA

と述べられています。

18年間国立ヨーガ研究所(MDNIY)に所長として勤務され、その間にインド伝統のヨーガがWHOの枠組みに組み込まれ、今回のWHOヨーガ・ガイドラインである『ヨーガの適切な使用へ向けた消費者情報/WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA』とともにさらに世界へ羽ばたいていく様子はさぞ誇りに感じて見えることと思います。

安心・安全なヨーガを、すべての人へ

また、序文の中で

MDNIYはWHOの共同センターとして、現代科学、研究、技術を通じて伝統医療の可能性を活用し、人々の健康とウェルネスを向上させ、予防医療と治療医療を手ごろな価格で、すべての人が利用できるようにすることを目指しています。

WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA

と述べられています。安心・安全で品質がコントロールされたものを、手頃な価格で、誰もがアクセスできるよう努めているということですね。

実際に国立ヨーガ研究所(MDNIY)では一般開放の無料のヨーガクラスが毎週末に開催されています。近所のご婦人から家族連れ、高齢の方も含め様々な方が参加されていました。

私も実はこの中に写っています。右端に見えるのがヴィクラム・シン氏です。このときは所長自ら参加されていました。
MDNIYの学生さんから、元生徒さん、インスラクター、家族連れなど様々です。
天気の良い日は外で実習します
CCY受講中の学生さん 普段は防衛学校の生徒さんです

ヨーガは一部のセレブや、修行者のみのものではなく、一般の方/必要な方が誰でも身近にアクセスできるべきであるということです。日本で例えるとラジオ体操のようなノリとも言えるかもしれません。

ヨーガの需要の高まりとニーズ

ヨーガという古代の知識体系への需要がますます高まる中で、消費者のニーズに応えるための情報開発が必要となっています。 本書では、ヨーガの歴史、伝統的な定義、ヨーガの基礎知識などを幅広く解説しています。

そして、様々なヨーガのテキストを探求し、身体的、認知的、感情的、そして社会的な次元での健康に対するヨーガの利点についても述べています。 また、本書は真正な知識のリソースを特定し、ヨーガの実践に関しての正確な情報を広めるためのガイダンスも提供しています。ヨーガのインストラクター、経験豊かな実習者、ヨーガ・セラピーへの応用に関心のある人々にとって、貴重な資料となることでしょう。

WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA

ヨーガへの関心がインド国内外で高まっている一方で、結局「ヨーガって何?」という疑問も多くなってきているのではないでしょうか? 実は「ヨーガの発祥はアメリカ!」なんていう誤解もゼロではありません。最近はお酒を飲みながら行うビアYOGAをはじめ、◯○YOGAたるものが多く普及していますが、そのコンセプトが本来のヨーガとかけ離れている場合もあります。

また「ヨーガの実習クラスには通っているけど、学べる場所に出会えなかった。」という声も聞きます。このガイドラインは結局「ヨーガって何?」と疑問を持つ方や、ヨーガの学び始めに最適な資料となります。インストラクターや教師の方にとっては、最新のWHOヨーガ・ガイドラインを確認してアップデートを図る良い機会になるのではと思います。

この冊子内では、インド国立ヨーガ研究所を中心として、国内外のヨーガ専門家が集結してまとめ上げたヨーガのイントロダクション的な内容が幅広く掲載されています。この内容を次回から少しずつ一緒に確認していきましょう。

各種プロトコール資料

本冊子は、様々な年齢層向けのヨーガ・プロトコールを作成するための洞察も提供し、健康保険プランにヨーガを含める必要性を強調、価格構造についても説明しています。 人気のあるヨーガ・アプリや国際ヨーガデーのために策定されたヨーガ・プロトコール(CYP)についての情報も掲載されています。

WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA

さて、序章にはプロトコールという言葉が出てきます。実は今回このガイドラインがリリースされるのと同じタイミングでWHOと協働で様々なプロトコールがリリースされています。

国立ヨーガ研究所の公式ホームページからもダウンロードが可能です。ダウンロード先リンクはこちら

『Yoga for Children』:子どものためのヨーガ

『Yoga for Women of Rreproductive Age』:妊娠適齢期の女性のためのヨーガ

『Yoga for Adolescents』:青少年のためのヨーガ

『Yoga for Geriatric Population』高齢者のためのヨーガ

『Yoga for Mental Health』メンタルヘルスのためのヨーガ

参照:http://www.yogamdniy.nic.in//Contents.aspx?lsid=3825&lev=2&lid=1694&langid=1

またこれらのプロトコールの元になっているのは、2015年第一回国際ヨーガデーに合わせてリリースされたヨーガ・プロトコール/Common Yoga Protocol(CYP)です。そしてCYPと同内容のWHO-mYoga Appの実習や、インド政府Ayush省ヨーガ教育委員会/Yoga Certification Board(YCB)によるヨーガ検定試験のシラバスに含まれる内容がこの冊子全体の中核となります。

国立ヨーガ研究所へ訪問した時にもCYPがライブラリーに並べられていました。ハンドブック程度の大きさです。

参考文献等の紹介

本書の付録には、重要なヨーガ文献、 インドのヨーガ組織/機関/センター、ヨーガ実践例などの詳細が記載されています。 更には、ヨーガの専門用語を理解するのに役立つ用語集も掲載されています。

WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA

この冊子の内容はインドのダルシャナ(哲学)文献、ハタ・ヨーガ伝統文献、各種研究レポート、また主要ヨーガ機関であるKaivalyadhama Yoga Institute, Svyasa, Bihar School of Yoga等のテキストまでが幅広く参照・構成されています。また推奨される書籍のリストも載っています。付録ではヨーガの用語も定義されており、冊子のなかで研究者へ向けてもこれらの用語の定義を論文を書く際に参照するよう推奨されていました。英語の文献が中心ですが、興味のある方は信頼できるヨーガ文献を探すのに参考になると思います。

本冊子の対象/ヨーガの対象

健康は幸福とウェルネスの基礎のひとつです。 本冊子は、キャリア志向の職業人であれ、中高年の主婦であれ、あるいはこれから老年期を迎える人であれ、誰もが健康的な生活を送るための重要なヨーガの原則と実践方法を理解し、管理するのに役立つでしょう。

WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA

この冊子の対象は、インストラクターや教師である方/もしくは目指している方、またはヨーガを実習されるあらゆる年齢層の方を対象としていると述べられています。

特にヨーガってエクササイズでしょ?自分向けではないな。とか、身体が柔らかくないとヨーガでできないんでしょ?ヨーガって宗教でしょ?などの疑問がある方、このガイドラインで疑問を解消していければと思います。

WHOヨーガ・ガイドラインの目指すもの

さて、いよいよ序章の締めとなります。ここには最後にこの冊子がどのような目的を持っているのかということが明確に記載されています。

本ガイドラインは、ヨーガ愛好家やその他の関係者に、ヨーガの適切な使用に関する信頼できる消費者情報の開発に必要な一般原則、アプローチ、活動の概要を提供します。

本書は、WHOのガイドラインに沿った広範な内容を盛り込み、体系的でシンプルなアプローチを通して、ヨーガ哲学を私たちの日々のヨーガの実践と統合することを目的としています。

ヨーガ愛好家、特に現代のライフスタイルの中に時代を超えた真理を探し求める探究心旺盛な人々にとって、本書が大いに役立つことを願っています。

イーシュヴァラV.バサヴァラッディ/Dr. Ishwar. V. Basavaraddi

WHO CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA

Dr. バサヴァラッディ氏の18年間と重ね合わせながら読むと胸がジーンとする思いになってきます。ヨーガは数千年の歴史を持つを言われていますが、この冊子の目的は、ヨーガを現代の私たちの生活に最適化した形で統合し、一人一人がより豊かな人生を送って行けるようにすることです。これは単なる読み物として終わるのではなく、この内容を実際の生活に取り入れていくことでより健康かつ幸福に近づいていけるということです。

ヨーガの目指す健康観、幸福感というのは、単に身体に病気がなければ良いというものではありません。

ある意味、終わりのないような究極の健康や幸福を追求していきます。腰痛解消の為にヨーガを始めたけど、今では他の目的を持ってヨーガ実習継続しているというケースもよく目にします。私自身も元々は看護師のシフト勤務で乱れた生活習慣の改善やストレス解消のためのエクササイズでしたが、今では生活の質や価値観そのものに影響するようになっています。

この冊子を読み込んでいくことで、ヨーガが身体の為だけではないということはすぐに理解できると思います。そんな果てしない魅力が詰まったヨーガを、ぜひ皆さんと安全に継続していければと願います。長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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