はじめに
インドに来て生活をしていると、さまざまな宗教行事や巡礼が日常の中に自然と溶け込んでいることに気づきます。その中でも、最近特に街中でよく目にするのが黒い服を着ている男性たちです。ダサラの時は赤い服をきている人を多く見かけましたが、今度は黒となっています。


気になって聞いてみたら、これはサバリマラ巡礼(Sabarimala Pilgrimage)に向けた修行期間を過ごしている人たちとのこと。
今回は、サバリマラ巡礼とはどのようなものか、そしてヴィシャーカパトナムで感じた身近な広がり、また地元のアイヤッパ寺院を訪れた時の様子を紹介します。
サバリマラ巡礼とは?
サバリマラ巡礼は、南インド・ケーララ州にあるサバリマラ寺院へ向かう、ヒンドゥー教の大きな巡礼行事です。
- 期間:毎年 11月中旬から約41日間
- この期間は「マンダラ・カラム(Mandala Kalam)」と呼ばれる修行の時期。
- 場所:ケーララ州パタンタッタ地区のサバリマラ寺院(Sabarimala Temple)
- ここは、ヒンドゥー教の神 アイヤッパ(Ayyappa)を祀る聖地です。
アイヤッパ神とは?
アイヤッパ神の出生は非常にユニークです。
• 父:ヒンドゥー教の大神 シヴァ神(Shiva)
• 母:ヴィシュヌ神が女性に変身した姿 モヒニ(Mohini)
この特異な誕生から、シヴァの力強さ と ヴィシュヌの慈悲深さの両方を備えた存在とされています。
41日間行う修行
サバリマラは「修行巡礼」とも呼ばれるほど、事前の準備が重要とのこと。
多くの男性たちは、巡礼前の準備として41日間の厳しい誓い(Vratham)を守ります。ただし修行期間そのものが重要で、行く・行かないに関係なく誓いを守る人もいるそうです。
修行内容の例
• 日中の断食(ファスティング)
• 完全菜食主義
• アルコール・肉・性行為などを断つ
• 黒や青の衣服を着て質素な生活
• 床で寝る(ベッドは使わない)
• 毎日祈りを捧げ、精神的・肉体的浄化を行う
街に黒い衣服の男性が増えるのは、この修行期間のしるしです。
ヴィシャーカパトナムでも感じるサバリマラ巡礼の広がり
ヴィシャーカパトナムの街中でも、この時期になると黒い服を着た男性たちが一気に増えることに気づきました。
また、大学事務の女性、寮の管理事務所の男性、私のセラピークラスに参加してくれている女性など、周囲の人々もサバリマラ巡礼をよく知っており、「今昼間は絶食中で、夜は床で寝ている」「毎日朝4時と夕方6時にプージャーに行く」「来週からケララに行きます」といった話題が頻繁に出てきます。


特にセラピークラスの参加者のひとりは、10日間ほどケーララ州のサバリマラ寺院に滞在して巡礼へ行くと話してくれました。インド文化の広く深い根づきを改めて実感しました。
ヴィザグのアイヤッパ寺院
そんな中、私自身も「地元ではどう受け止められているのだろう?」と気になり、近所にあるアイヤッパ寺院を訪れてみました。
プージャー(礼拝)の時間ではありませんでしたが、地元の人たちが静かに訪れ、寺院内に座り瞑想したり、祈りを捧げたりとそれぞれの時間を過ごしていました。外から見ているだけでも、この巡礼が日常生活の中でいかに大切にされているかが伝わってきました。



おわりに
サバリマラ巡礼は、ここヴィシャーカパトナムでもその存在感は強く、南インドの伝統的な信仰行事というだけでなく、人々の日常の中に深く入り込み、生活や心の在り方に影響を与えている文化実践であると感じました。
インドでの生活では、このように宗教行事が個人の生活や社会にどのように関わるかを日々感じることができ、とても学びの多い時間となっています。本日もありがとうございました。





