先日、岐阜大学で開催された「北東インドの多様性と平和を考える」という講演会を聴講してきました。普段、インドと言えばデリー、ムンバイ、ベンガルといったメインランドが注目されがちですが、今回の講演会では、インド北東部の8つの州に焦点を当てた非常に興味深い内容でした。自身のメモも兼ねて簡単にまとめて置ければと思います。
「北東インドの多様性と平和を考える」プログラム
- Part1: 講演
- 1. インド北東部とは?インド北東部と日本の関係に関する概要
- 2. インド北東部の文化や民族多様性およびThe Northeast India AV Archive(https://www.nearchive.in)の活動
- 3. インパール作戦に従事した日本兵の遺骨収集と慰霊
- Part2: 報告:北東インドと岐阜大学との関わり
- 1.インド工科大学での学生生活
- 2.北東インドと岐阜大学の産学連携
インド北東部とは?インド北東部と日本の関係に関する概要
岐阜女子大学 南アジア研究センター笠井亮平特別客員教授
今回の講演会でお声掛けいただいた笠井亮平先生の講義では、北東部についての概要について日本との関連に焦点を当てながら分かり易くお話していただきました。
インド北東部といえば、紅茶で有名なアッサムはご存知の方も多いと思いますが、実は現在8つの州があります。インド全体の面積としては8%、人口は3.8%とのことですが、その存在価値や魅力は物理的な規模以上のものがあるとのこと。北東部は多様性の国インドの中でも、多様性を誇っており、200以上の小民族グループやそれ以上の言語があるようです。宗教もヒンドゥー教以外に、キリスト教やチベット仏教などの人口比率も多く、また土着のアミニズム信仰との融合が見られるとのこと。
日本との関係は1944年3月の「インパールの戦い」で日本軍が進入。その後7月に作戦は中止となっていますが、兵士の遺体が放置され「白骨街道」とも呼ばれる場所があるとのこと。(街道と呼べるような道ではないようです)現在はインパール作戦から80年が経過、インド平和記念碑(1994年設立)、インパール平和資料館(2019年設立)、コヒマの記念碑、コヒマ・エコパーク(建設中)のお話など実際に何度も足を運ばれいてる先生による現地の写真を含めた解説により、多くの知らなかった北東部の様子や日本との関係について学ばせていただきました。
また関連して笠井先生が編著された『インド北東部を知るための45章』という本が、来月9月13日に刊行されるとのことです。インド北東部に焦点を当てた専門書は日本初とのことで、その土地や文化について学ぶ良い機会となりそうです。インド北東部に友人を持つ私にとっては、友人の理解を深めるためにも読むのが非常に楽しみです。
北東インド北東部の文化や民族多様性およびNEIAV活動
メガラヤ州 セント・アンソニーズ大学 ジュニーシャ・コンウィール教授
インドは多様性の国として知られていますが、北東部だけでも220種類もの言語が存在することを知り、その文化的豊かさに驚かされました。また、この地域の地形、豊かな自然環境や資源、広大な景観、宗教や文化の多様性など、改めて北東インドの魅力を感じました。
- 左の写真はゴムの木の根を編んでできた橋とのこと。他にも豊かな自然の織りなす絶景の写真も見せていただき、ぜひ一度訪れてみたいと思いました。
北東インドのアーカイブと展示会
講演会では、北東インドに関するアーカイブが作成されていることが紹介されました。これは笹川平和財団の支援により作られたもので、The Northeast India AV Archive(https://www.nearchive.in)として公開されています。また、北東部の紹介やインパール戦争を含めた展示会も多く開催されているとのことです。「戦争は何の解決にもならない」「対話が必要である」というメッセージは、戦争を経験していない世代としても、決して忘れてはいけないと改めて感じました。
北東インドに眠るインパール作戦に従軍した日本兵の遺骨収集と慰霊
ナガランド州 観光局コンサルタント アジュヌオ・ベルホ氏
今年はインパール戦争から80年という節目でもあります。インパールでは今も遺骨の収集活動が行われており、長期に渡ってコヒマの戦いで亡くなった日本兵の遺骨収集に従事しているアジャヌオ氏からもお話を伺いました。アジュヌオ氏はその貢献から日本国外務大臣賞も授与されています。インド人でありながらも、日本兵の遺骨収集に尽力されている姿には頭が上がりません。そのような活動や繋がりが今後の両国の関係や平和に貢献すると信じていると思いを語ってみえました。戦争の記憶を風化させず、平和の大切さを次世代に伝えることの重要性、メッセージを受け取る側としても身が引き締まる思いでした。
岐阜大学とインド工科大学グワーハーティー校の連携
自然科学技術研究科修士2年の学生さん
グローカル推進機構三輪真一特任教授
岐阜大学とインド工科大学グワーハーティー校は連携しており、ダブルディグリーを取得できるプログラムもあるそうです。実際にインド工科大学へ留学していた学生の杉原さんのお話も非常に興味深く、異文化交流の大切さを実感しました。また三輪先生のお話では、北東部の資源として「竹」について取り上げられていました。竹は燃料として使用した時もCo2の排出量が極めて少ないエコ燃料とのこと。また化粧品、飼料、肥料など多くの可能性が紹介され興味深かったです。ヨーガマットもぜひ竹製で作っていただけたらなとも思います。今後インド工科大学にも岐阜大学のセクションが設立されるとのこと。インドと母校のつながりが嬉しくなりました。
おわりに
久しぶりの母校訪問となりましたが、構内散歩もお楽しみの一つとなりました。まず今回の会場となったOKB岐阜大学プラザというなんともスタイリッシュな建物ができていることかと驚きました。今年2024年2月に、産学交流・起業活動・共同研究の3つの特徴的な取り組みを展開する 地域のオープンイノベーション創出拠点として岐阜大学内に開所したそうです。大垣信用金庫を始めとした企業支援によるもののようです。
また学食には当時なかったハラールメニューがあり、国際化を感じました。食堂ではイスラム教の服装をまとった女学生も多く見かけましたので、きっと活用されていることと思います。
看護棟は当時のままでした。この場所でナース服を着ながら小島よしおのオッパッピーのポーズをしてみんなで撮っていたことを思い出しました。笑(写真は見つからず、笑)