ベトナムの旧正月料理バインチュン・ケーキ(Banh Chung Cake)作り

ベトナムの街歩き

はじめに

みなさん、シンチャオ、こんにちは。ベトナム・ハノイにある尼僧院に滞在中の竹内です。現在ベトナムは旧暦正月の準備の真最中です。今日はその中でもお正月に欠かせない料理「バインチュン(Banh Chung)」作りの様子を簡単にご紹介できればと思います。

ベトナムは、中国やフランス(フランス統治時代)などの影響を受けており、中国文化と通ずる米食や、フランス文化と通ずるバゲットを使ったバインミーがベトナム料理の特徴に挙げられるなど多様な側面を持っています。また全体として醤油やナンプラー、味噌のような発酵調味料を利用した味付けは日本人の味覚にも合うように思います。

ブンチャーhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ベトナム料理
フォーhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ベトナム料理
バインミーhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ベトナム料理

バインチュン・ケーキとは

バインチュン・ケーキ(Banh Chung Cake)は、チュン・ケーキとも呼ばれ餅米、緑豆、豚肉などの材料から作られた伝統的なベトナム料理です。ベトナム版ちまきとも言われています。

ちなみに今回はベトナムの僧院で餅米と緑豆をメインにした菜食のバインチュン・ケーキを作りに参加させていただきました。

https://en.wikipedia.org/wiki/Bánh_chưng

バインチュン・ケーキの起源

「バインチュン」は、フン王第6王朝の時に作られた食べ物と言われています。第6王朝のフン王は、後継者を選ぶ際に息子たちに「先祖を崇拝するのに最も相応しい料理」を持ってくるよう課題を出しました。その中で最も優秀な料理を持ってきた者が次の王位に就くと宣言しました。多くの王子が希少価値の高い珍味を探す中、最も貧しいラン・リュー王子は日常の食材で賄うしかなく、米、豚肉、緑豆といった材料で創意工夫してできた料理がこの「バインチュン・ケーキ」だったとのこと。このバインチュンの正方形の形は大地/地球を表し、バインザイと呼ばれる丸い形のものは空を表しているそうです。バインチュン・ケーキの味や祖先を敬う表現が評価され、ラン・リュー王子は第7代フン王朝の王に選ばれることとなりました。(諸説あり。こちらはWikipedia参照https://en.wikipedia.org/wiki/Bánh_chưng)

大地/地球を表す正方形のバインチュン
空を表現するという筒状のバインザイ

バインチュン・ケーキの作り方

バインチュン・ケーキですが、作るのにはなんと1日以上かかります。また多くの工程があるので、家族やご近所が総出で作るのが伝統のようです。ただ現在は市場やマーケットで出来上がったものも購入が可能です。

バインチュンの主な材料は、餅米、緑豆、豚肉などです。更にそれらを包むためにゾンと呼ばれるウコン科の植物の葉を使います。この葉の香りも質の高いバインチュンの決め手となります。こちらの僧院ではゾンの葉やもち米も自分たちで栽培しているとのこと。ゾンの葉、餅米、緑豆はぞれぞれ浸水して下準備をします。

ゾンと呼ばれるウコン科の植物の葉
ゾンと呼ばれるウコン科の植物の葉

緑豆は茹でてから、ペースト状に潰し、ピーナッツ、玉ねぎ、塩を混ぜてだんご状にしておきます。もうこの時点で美味しそうな匂いがしています。

浸水後の緑豆を洗っています
潰した緑豆、ピーナッツ、玉ねぎ、塩が入っています

ゾンの葉も前日から浸水、当日綺麗に拭き取り作業を行い、葉の中心の繊維を歯を使って取り除いていきます。バインチュン・ケーキは隙間なく包むことで長く保存することができます。失敗すると葉が破れてしまうので慎重な作業です。

雨水利用の井戸水です
丁寧に表面の拭き取り作業を行います
繊維を歯で取り除きます

またもち米は他の種類の葉を使い緑色に染色していきます。

葉を細かく刻み緑色を液を抽出します
葉から抽出した液ともち米を混ぜています

その後、専用の正方形の器具を利用しながら、ゾンの葉で型を作り、その中にもち米、緑豆の団子、もち米の順に重ね、蓋をしていきます。しっかりと叩いて隙間をなくし、紐で縛っていきます。ゾンの葉で型を作る人、材料を入れる人、紐で縛る人に分かれ、流れ作業で多くの工程をこなしていきます。

バインチュン作りは家庭により微妙に包み方も異なるようです。こちらの僧院流の包み方で練習したので「うちの系譜の包み方が出来てるわ。ぜひ日本で屋台を出したらいいわ!うちの名前でね!」と冗談混じりに話しながら盛り上がりました、笑。

専用の器具を使い正方形の包みを形成します
もち米、具材、もち米と重ねていきます
しっかりと押して隙間がないようにします
包みを紐で縛って固定します

ここから大きな鍋で茹でていきますが、なんと12時間茹でていきます。このように時間をかけることで、常温でも長持ちするバインチュン・ケーキが出来上がるとのこと。常温で半月ほど、冷蔵庫では数ヶ月の保存が可能とのことです。

この日ハンさんは徹夜でバインチュン・ケーキの釜の火を絶やさないよう、また水が蒸発して鍋が空にならないよう見守ってくれていました。尼僧さんが子供時代に家庭でバインチュン・ケーキを作っていた時も、この日は釜の前に布団を持ってきて家族一緒に一晩中見守っていたそうです。この時期は北ベトナムの冬にあたり、火が焚べられた釜の前で過ごす家族団欒の時間でもあったようです。

朝になりバインチュン・ケーキを取り出し、水で表面を洗います。その後はしばらく重しを乗せて放置しておきます。

12時間茹でたバインチュン・ケーキを取り出します
表面を水洗いします
2段階で表面を洗ってきます
この上に重しを乗せてしばらく放置します

さいごに

最近はマーケットでも購入ができますが、僧院で伝統的な方法でのバインチュン・ケーキ作りはとても興味深く、何よりもバインチュン作りを通じての現地の皆さんとのコミュニケーションが愉しかったです。さて明後日は旧暦元旦です。バインチュン・ケーキを開封したらぜひ中身も更新していきたいと思います。

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