1.WHO-CC CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA

WHO-CC ヨーガ・ガイドライン

はじめに

日本のヨーガ愛好家の皆さん、こんにちは。現在インドビザの関係でタイバンコクにしばらく滞在することになり、ノマド的にヨーガ関係の仕事をしています。そんなタイはタイ伝統医療の一環であるタイマッサージで有名ですが、きちんと教育やトレーニングを受けているセラピストさんと、そうでない方とでは正直雲泥の差があり、マッサージの後逆に身体が痛くなったという話もよく聞きます。実際私もそのようなマッサージを受けたことがあります・・・今思い出しても拷問のように辛かったです・・・。特に観光地やツーリストが集まる場所などは、そんな確率が高いかなと思います。さてこれって、タイマッサージだけでなく、伝統補完代替医療の分野では起こりがちなことなんですよね・・・。そしてヨーガも例外ではありません。そんな状況を打開する動きが世界で始まっています。

2023年にWHO(世界保健機関)CCからヨーガ分野のガイドラインがリリース

昨年2023年にWHO(世界保健機関)のコラボレーション・センター(Collaboraling Cecter)であるMDNIY(インド国立ヨーガ研究所)からヨーガ分野のガイドラインを示すブックレットがリリースされているのをご存知でしょうか?

ダウンロード先はこちら:インド政府Ayush省WHO Collaborating Centre in Traditional Medicine (Yoga) – IND 118

WHOからは今までも伝統補完代替医療の分野でベンチマークを出しています。例えば、タイ伝承医学のタイマッサージ、インド伝統医学アーユルヴェーダ、イスラム教伝統医学ユーナーニー医学、中国伝統医学、ナチュロパシー、鍼灸などが含まれます。

この度ヨーガ分野においてWHOのCCであるMDNIY※より、「CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA」というタイトルにて、日本語では「ヨーガの適切な使用に関する消費者情報」といった意味合いの、ヨーガを実習/消費する方が安心・安全にヨーガを学び、実習が継続できるための指針が示されました。

※正式名称:モーラールジー・デーサーイー国立ヨーガ研究所/Morarji Desai National Institute of Yoga (MDNIY) WHO CC(協力センター)として指定されているインド政府Ayush省傘下にあるインドの国立ヨーガ研究所(MDNIY)が中心となって作成されています。

ヨーガ改革とWHO 〜2014年以降について〜

ヨーガの歴史の中でも、ここ数年で急激にヨーガについての新たな認知が広がってきています。インド首相ヨーガ実習者としても高明なナレーンドラ・モーディー首相が2014年9月27日に開催された第69回国連総会の演説で「国際ヨーガ・デー/International Day of Yoga(IDY)」を制定するよう国際社会に呼びかけ、同年12月11日には国連で6月21日を「国際ヨーガ・デー(IDY)」とすることが決議されました。その後2015年6月21日に第1回「国際ヨーガ・デー(IDY)」が開催され、毎年その規模は拡大しています。

また2021年第7回「国際ヨーガ・デー(IDY)」にはWHOとインド国立ヨーガ研究所(MDNIY)の協働により「WHO mYoga App」というヨーガ実習用の無料のモバイルアプリがリリースされています。WHO mYoga AppがダウンロードできるWHOサイトのリンクはこちら

そして翌年2022年にはインドのグジャラート州にWHO Global Center for Traditional Medicine/WHO伝統医療のグローバルセンターが設置されており、その枠組みの中でもヨーガへの注目は高まっています。

そして今回2023年に冒頭で触れたWHOCCによりヨーガ分野のガイドラインである『CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA』『ヨーガの適切な使用に関する消費者情報』 がリリースされたのです。

『CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA』の意義

インド伝統文化の一つであるヨーガは、その健康への効果が科学的にも解明され、さらに世界でも注目が高まっています。しかしその一方で誤解や誤用による弊害も多い分野です。

また情報化社会の中で、ネットやSNSにもヨーガに関する多くの情報がありますが、中には根拠がなかったり、間違った情報や偏った情報が掲載されていることもあります。これは全ての分野で言えることですが、「ヘルスリテラシー」という言葉もあるように、消費者側(ヨーガを利用する側)も「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力」を高めていく必要があります。

その為にも今回の『ヨーガの適切な使用に関する消費者情報』の内容を知っておくことは、ヨーガに関する正しい情報を入手し、私たちが自分で自分を守ることでもあります。そしてヨーガに関する基礎知識と技術を信頼できる資料で学び、さらにこの知識を活用することで健康とウェルネスを向上していくことにつながるのです。

またインストラクター側としては、インドAyush省YCB(ヨーガ教育委員会)によるヨーガ検定制度はこのガイドラインの枠組みに含まれていますので、YCBインストラクター/ティーチャーとしての自覚を高め、このWHO CCのガイドラインを共有し、準じた内容でクラスを提供していくことがその務めとなっていくかと思います。

YCBインストラクターの皆さん、一緒に頑張りましょう!

私自身もこのYCBのYoga Master(Level4)かつ試験官申請中となりますので、この内容を少しずつ、分かりやすく皆さんと共有できればと思い、『CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA』『ヨーガの適切な使用に関する消費者情報』の連載シリーズを試みていきたいと思っている次第です。

『CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA』の内容

この冊子の中では、ヨーガの歴史、伝統的な定義、ヨーガの基礎知識などが幅広く解説されています。様々なヨーガの伝統文献も紹介されており、それらの概要を見ることで、いかにインドではその昔から人間を包括的に捉え、身体的、生理的、心理/感情的、社会的、そして精神性に至るまであらゆる側面を統合し、人間性を高めてこようと努めてきたのかが垣間見えるかと思います。

またヨーガは現在セラピーとして益々注目を浴びてきていますが、信頼できる知識や情報の選び方や、特に初心者が安全に実習を始めるための手引きなども示されています。ヨーガは正しい手順によって実習を行うことで、その効果を最大限に得ることができます。ここではその手順の大切さが強調されています。またヨーガ・セラピーの限界なども示されています。

また多種多様なヨーガ実習の各技法グループの概要とその効果などについても記載があります。これはインド政府Ayush省から出版されているCommon Yoga Protocol/ヨーガ・プロトコールや、国立ヨーガ研究所(MDNIY)の資料と対応した内容となっています。他にもインストラクター/ティーチャー/セラピストへのガイドラインや、ヨーガクラスの価格設定について、またヨーガ用語集なども掲載されています。

『CONSUMER INFORMATION ON PROPER USE OF YOGA』の目次

今回はこのガイドラインの目次を紹介していきたいと思います。

第1章 概要

  • 1.1 ヨーガ入門
  • 1.2 ヨーガの定義
  • 1.3 ヨーガの歴史と発展
  • 1.4 ヨーガの特徴
  • 1.5 伝統的なヨーガの流派/系統
  • 1.6 ヨーガに関する伝統的なテキスト
  • 1.7 文化的影響
  • 1.8 ヨーガの健康効果
  • 1.9 ヨーガに関する誤解と事実

第2章: 信頼できる情報をどこで見つけるか

  • 2.1 伝統的知識の情報源
  • 2.2 信頼できる情報の見分け方

第3章 セラピーとしてのヨーガ

  • 3.1 ヨーガ・セラピーとは何か?
  • 3.2 ヨーガ・セラピーの特徴
  • 3.3 ヨーガ・セラピーの原理
  • 3.4 ヨーガの実践に関わるメカニズム
  • 3.5 ヨーガ・セラピーの限界
  • 3.6 セラピーの主張
  • 3.7 セラピーに用いられるヨーガ指導の質
  • 3.8 注意事項
  • 3.9 ヨーガプラクティスのための個人の前提条件
  • 3.10 副作用
  • 3.11 相互作用と禁忌
  • 3.12 ヨーガのポソロジー:どの程度の実習が良いのか?
  • 3.13 処方の方法
  • 3.14 ヨーガの自己学習と自己実践

第4章 プロトコールの準備

  • 4.1 ヨーガ・セラピーの「自分で行う」タイプの自己学習と実践
  • 4.2 子ども、妊婦、授乳婦、高齢者

第5章 手順に基づいたヨーガ教育兼セラピー

  • 5.1 ヨーガプラクティショナーのための一般的ガイドライン
  • 5.2 ヤマとニヤマ
  • 5.3 アーサナ
  • 5.4 プラーナーヤーマ
  • 5.5 プラティヤーハーラ
  • 5.6 ダーラナー、ディヤーナ、サマーディ、サンヤマ
  • 5.7 シャトカルマまたはショーダナ・クリヤ
  • 5.8 ムドラーとバンダ
  • 5.9 ユクタ・アーハーラとユクタ・カルマ
  • 5.10 マントラ・ジャパ

第6章 プラクティショナー、価格設定、健康保険適用

  • 6.1 プラクティショナー/職業としての活動
  • 6.2 価格構造と健康保険適用
  • 6.3 認定と標準化
  • 6.4 ヨーガ・アプリ
  • 6.5 この出版物の使用

第7章 健康とウェルビーイングのためのヨーガ・プロトコール

  • 7.1 ヨーガ・プロトコール(CYP)
  • 7.2 ヨーガ・プロトコールの準備

付録

  • 付録1 ヨーガのテキストとその解説のリスト
  • 付録2 インドの重要なヨーガ機関、大学、ヨガセンター
  • 付属3 ヨーガに関する研究ジャーナルと雑誌
  • 付録4 健康な生活のための重要なシャット・カルマ
  • 付録5 健康な生活のための重要なアーサナ
  • 付録6 健康な生活のための重要なプラーナーヤーマ  
  • 付属書7 健康な生活のための重要なムドラーとバンダ
  • 付録8 ディヤーナ(瞑想)
  • 付録9 フィット・インディア・ムーブメントのための年齢に応じたヨーガ・プロトコール

用語集

次回からは少しずつ内容を見ていきましょう。

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