チベット伝統医学/ソーワリグパの薬草採集から加工

ラダック編

先日(2023年8月20日) Ladakh Nuns Associationのチベット伝統医学/ソーワリグパ医師(Amchi)である尼僧さん達に同行しソーワリグパの薬草採集に参加させて頂きました。

場所はPhyang/Fiang/フィアングというレーから約15キロほど離れた場所で、標高もレーからさらに上がっていきます。

こんな山奥に道を作るのはさぞ大変な作業だろうなと思っていると、まさに工事中の方々にも遭遇しました。

最終的には民家がなくなる最終ポイントという所まで上がっていきました。まさに絶景が広がっています。

早速手袋と薬草を入れる袋を持ち、本日採集する目的の薬草を教えてもらったら、皆で一斉に収集開始です。近くで採集している人とのおしゃべりも交えながら、ひたすら薬草を摘んでいきます。

澄んだ空の元、最高に綺麗な水が流れる中で育つ薬草は、匂いを嗅ぐと清涼感のある薄荷の匂いがします。

薬草を摘みながら、ふと『ラーマーヤーナ』でハヌマーンが瀕死のラクシュマナのためにヒマラヤの薬草を運び、傷口に薬草を塗っているシーンが思い出されました。このような大自然の空に近い環境で育ち、尼僧さんたちが摘んだ薬草はさぞ効くだろうなとしみじみ思ってしまいます。

周囲には自生のサヤエンドウも育っていて、小腹が空いたらサヤエンドウを生で食べます。サヤエンドウが生で食べられるというのはラダックに来て知りましたが、新鮮なサヤエンドウは甘くて美味しいです。

1時間半ほど薬草採集をしたら、ひと休憩です。ミルクティーやバターティー、ラダックではお馴染みのトゥクトゥクというローカル・ビスケットやローカル・チャパティを食べながら皆で団欒のひと時を過ごします。

その後は再び薬草を摘み、少し肌寒くなってきた頃に採集作業終了。今度は薬草を水で丁寧に洗います。

そして一人あたり大きなポリ袋2つ分くらいの薬草を担ぎ車に戻ります。

そらも薄暗くなり車で帰路に向かっていたところ、急に前方の車が止まり尼僧さんたちが車から出てきます。何が起こったのかな?と思っていたら車道の脇に生えている薬草の採集が始まりました。前回と種類が違い、大きな薬草で2-3人係りで綱引きのように抜いていきます。

それも終わり、よし今度こそ帰宅かな?と思っていたら、今度は民家のある側道に入っていきます。そして民家の方と少し話したら、今度は民家裏にあるエリアに生えている薬草の最終が始まりました。

時間もすでに18時半を過ぎていますが、ここには本日の採集のメインなるような最も貴重な薬草が生えているとのこで、こちらも最後の力を振り絞って採集に励みました。

朝の9時頃には出発し、LNAに到着したのは完全に暗くなった夜の20時ごろと一日掛りの作業でしたが大変貴重な経験でした。

ここから別日になりますが、採集し水で洗った薬草を、種類毎に適度な大きさに刻んでいきます。そして十分に自然乾燥させていきます。薬草加工のお手伝いの方も作業に加わります。

乾燥した薬草をさらに細かく砕き、最後は機械も使いながら粉状にしていきます。粉状になった薬草は、単品で包装することもあれば、数種類の薬草の粉を配合し包装することもあります。また錠剤にして丸く固める場合もあります。薬剤によっては、圧力鍋で長時間加熱をしている場合もあり、加工にも様々なケースがあるようです。

丁寧に全てが手作業で行われているソーワリグパの薬草加工は非常に興味深いです。

こちらの尼僧さんらも偏頭痛を始め慢性疾患症状に対して、これらの薬草を生活の一部のように取り入れられています。西洋医学の医薬品を使うのは、症状が強い時のみとのこと。

ソーワリグパの医師は口を揃えて、ソーワリグパの薬草を使った薬には副作用がないとおっしゃいます。もちろん用法用量を守り正しく使うことが必須ですが、ラダックの環境の中で、ラダックの人々にとっての、ラダックで育つ薬草を取り入れた治療はまさに人と環境の相互作用のように思います。

最近はラダックも開発が進み、他の州からのインド人移住者も増えてきています。また観光客や地元の方もお菓子の袋をそのまま捨てて帰ってしまう方が多く、せっかくの大自然の中にプラスチックのゴミが多く散乱しているのを見かけます。

大空に近く、貴重な薬草も生えるこの特別な自然環境を皆で大切にしなくてはと改めて感じました。

本日もありがとうございました。

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