先日(2023.8.26)LNAの尼僧であるVen.ソーナムさんと、LNA滞在中のネールさんに同行してティクセ・ゴンパとタクトック・ゴンパへ訪問させていただきました。ネールさんは、LNAへ長年に渡って寄付をされてきており建設中のLadakh Nuns Instituteの建設もサポートされています。
ここではそのうちの一つであるティクセ・ゴンパについて紹介していきたいと思います。
テクセ・ゴンパのwikipediaはこちら
テクセ・ゴンパ(Thikse Gompa/Thikse Monastry, Tikse/Thisey :日本語ではテクセもしくはティクセイなどとも発音されます)は、チベット仏教のゲルク派に属する仏教僧院です。ラダックの中心部から約19km離れた、インダス渓谷の標高3,600mの場所に位置しています。チベットのラサにあるポタラ宮殿に似ていることで有名で、ラダックで最大の僧院です。また1970年にダライ・ラマ14世が訪問されたことを記念して設立されたマイトレーヤ菩薩の仏像でも有名です。
道路に面したティクセ・ゴンパのある敷地内へ入る門をくぐると、まずはレストランや宿泊施設があり、そこからティクセ・ゴンパに登っていく参道が始まります。
この敷地全体が丘の斜面に位置していて、丘の麓から僧侶の方々の住居が配置され、丘を上に連れて徐々に重要な建物が配置されていきます。そして丘の頂上にはストゥーパが聳えています。この建築様式は、歴代のダライ・ラマのかつての公的居住地であったチベットのラサにあるポタラ宮殿に似ています。
ポタラ宮殿のWikipediaはこちら
従来は居住エリアから階段で登っていく道のみでしたが、今は自動車用の道路もあり車で登っていくこともできます。この日は時間の関係もあり麓のレストランで食事をとってから、車で登っていきました。
駐車場に着くと、ティクセ・ゴンパの入り口があります。メインのゴンパは12階建ての複合施設になっていて数々の仏塔や、彫刻、ティルカ、壁画、剣など仏教美術が多く収容されているとのこと。
そしてこのエリアの上方に、1970年にダライ・ラマ14世がティクセ・ゴンパを訪れたことを記念して建てられたマイトレーヤ菩薩/Maitreya Buddhaの仏像があります。マイトレーヤ菩薩は高さ15メートル、2階建ての建物を貫いて鎮座されています。その設立には4年の歳月がかかったとのことです。
2階部分から建物の中に入ると巨大なマイトレーヤ菩薩に圧倒されます。微笑んでいるような優しい表情をされています。
マイトレーヤ菩薩の完成後、1980年にダライ・ラマ14世が訪れた際に、以下の言葉を述べられたとのこと。(一部抜粋)「・・・ This Maitreya is very beautiful. Even if you see this Maitreya again and again, you will never see it enough. You will always want to see more -you will never be satisfied. I have seen many statues, but this Maitreya is very special for me. I have never seen a Maitreya like this before. Rinpoche, the Sangha community and sponsors will accumulate great merit. 」
「このマイトレーヤ菩薩はとても美しいです。このマイトレーヤ菩薩を何度見ても見足りない。もっと見たいと思うでしょう。私は多くの仏像を見てきましたが、このマイトレーヤ菩薩は私にとって特別な存在です。このようなマイトレーヤ菩薩を見たのは初めてです。ここに関わるリンポチェ、サンガ、サポートされている方々は大きな功徳を積むでしょう。」日本語試訳
特にこの「マイトレーヤ菩薩は、そのあまりの美しさから見飽きることなく、もっと見ていたい、もっと見ていたいという思いが起こるでしょう」といういう部分が印象的でした。
これを読んで『パタンジャリ・ヨーガ・スートラ』にあるP.Y.S.Ⅰ-37Vītarāgaviṣayaṃ vā cittamが思い起こされました。このスートラでは“対象からの欲望から離れた存在/師などを思い起こすことで心が安定する”ということが述べられています(意訳)。目の前の美しいマイトレーヤ菩薩に心を向けながらしばらく時を過ごすことで、心が落ち着いていくのを感じました。
また建物内の壁面にはマイトレーヤ菩薩のストーリーや、ティクセ・リンポチェの系譜、シャカムニ仏陀、マンジュシュリ、マイトレーヤ、ナーガルジュナ、6名の偉大な学者達などが描かれています。
こちらのテクセ・ゴンパで少し驚いたことは、すれ違う方の多くがアイスクリームを食べていたということです。このようなゴンパでアイスクリーム?と思ったのですが、頂上近くにアイスクリーム屋さんがあり、参拝の帰りにみなそこで購入されているようです。ティクセ・ゴンパでは、新たな修復が従来のもつ伝統的な姿と異なっているという点で論争があるようで、新たな建築と従来の秩序を維持するためにバランスが求められていとのことでした。今回のアイスクリーム屋さんも意見が分かれているようです。今後のティクセ・ゴンパの修復作業にも注目をしていきたいと思います。
本日同行させていただいたネールさんは現在80歳を超えて見えますが、マイトレーヤ菩薩が建設された直後にこの場所を訪れたことがあるとのこと。帰国後もずっとこのマイトレーヤ菩薩の姿を忘れたことがなかったようです。今回はネールさんにとって念願のマイトレーヤ菩薩との再会となりました。
Ven.ソーナムさんとネールさんは、Ven.ソーナムさんがまだ尼僧になる前からお知り合いだったとのこと。お二人の親子のような仲の良さが伝わってきます。
このような機会に同行させていただき感謝しています。
Om Mani padme hum