はじめに
私ごとですが、先日、インドAyush省傘下のYoga Certification Board(YCB)が実施しているYoga Therapist(ヨーガ・セラピスト)試験に無事合格しました。
YCB公式ウェブサイトリンク
今回はその試験の様子や、受験してみた感想を少しご紹介したいと思います。


インドで高まる「ヨーガ・セラピー」への関心
インドでは現在、伝統医学であるアーユルヴェーダや自然療法(Naturopathy)と並び、ヨーガが疾患予防・健康増進・治療サポートの重要なツールとして注目を集めています。Ayush省の枠組みの中でも、特に低コストで非侵襲的な自然療法とヨーガの組み合わせは、さらに推進が加速しています。GoogleのAI Hubの設置も決まり、発展が目まぐるしいヴィシャーカパトナムにも、インド最大級の自然療法とヨーガの研究所が設立されることになりました。Times of Indiaの記事
YCBでも教育分野とは別に、ヨーガ・セラピーのカテゴリーが設けられており、次の3段階のレベルがあります。
- Assistant Yoga Therapist
- Yoga Therapist
- Yoga Consultant
今回私はその中間にあたる Yoga Therapist(ヨーガ・セラピスト) を受験しました。
すでに教育分野の「Yoga Master」には合格していたのですが、看護師としてのバックグラウンドがあること、そして公の場でヨーガ・セラピーを語るためにはこの資格が必要だと感じたことが理由です。
試験の特徴と学習内容
YCBヨーガ・セラピスト試験の特徴は、「医学的知識」と「ヨーガの応用」の両方が求められること にあります。特に以下の範囲が詳細に問われます。
必須となる領域
- 解剖生理学の基礎理解
- 各種疾患の理解(生活習慣病・心身症・精神疾患・加齢に伴う疾患・婦人科系など非常に幅広い)
- ヨーガ実習の効果と禁忌
- 現代社会におけるヨーガ的アプローチの応用
看護師としての知識が役に立つ部分も多かったのですが、改めて学び直しが必要でした。(詳しくはYCBシラバスをご参照ください。)
疾患に関する領域は、看護師向けテキストや国家試験対策動画(インド版・日本版の両方)を参考にし、ヨーガに関する部分との関連付けは、インドで入手可能なヨーガ・セラピー専門書を中心に学習を進めました。四択問題対策としては、NoteBook LMで自作問題を作り、繰り返し解くように工夫しました。


過去問なし、情報も少ない…でも受けてみることに
セラピー分野は過去問が手に入らなかったため、勉強の手がかりが少なく、
「できる範囲で準備し、あとは様子を見るつもりで受験した」というのが正直なところです。しかし実際に受けてみると、
- 四択問題は教育分野の試験よりも圧倒的にサイエンス寄り
- 疾患・解剖・生理学の知識が中心
- ヨーガの効果や禁忌の理解が非常に重視されている
ということがよく分かりました。
ヨーガ・セラピーという性質上、教育分野で強調される伝統文献の深い解釈というよりも、「伝統的実践をどのように現代の健康課題に応用できるか」 が問われる試験内容でした。ただここには解剖生理学的な部分だけでなく、心理的な部分も多く含まれます。ヨーガ哲学をベースとしたヨーガ的カウンセリングなどの理解も問われます。
実技と質疑応答で問われた内容
2日目の実技試験と質疑では、以下のような内容が出題されました。ヨーガ教育分野と対比して分かりやすい一部をご紹介します。
- 各種技法の禁忌や効果についての詳細なメカニズム
- 肥満(各種生活習慣病や心身症)のメカニズムとヨーガ実践のプラン
- ヨーガとヨーガ・セラピーの違い
- ダイエットプランと栄養学の基礎:ケーススタディ的にプランを作成
- 消化器系の説明とヨーガ的アプローチ
- メンタルヘルスに対する『パタンジャリ・ヨーガ・スートラ』の応用
どれも日常的に応用できる内容であり、実践家としての総合力を問われる印象でした。試験範囲は広く大変でしたが、この機会に禁忌・効果・疾患理解を総合的に見直すことができたのは大きな収穫でした。
試験後、思わぬ流れで「実践の場」が舞い込む
そして試験結果が出た直後、まるでタイミングを合わせたかのように、アーンドラ大学でヨーガ・セラピークラスを担当することになりました。COPD、高血圧、関節炎、脳卒中後の方々など、さまざまな背景を持つ参加者が来られるクラスです。今回のYCB Yoga Therapist取得が、ちょうどそのスタートラインに立つ後押しになったように感じています。


おわりに
YCBのヨーガ・セラピスト試験を受けてみて、ヨーガ教育とヨーガ・セラピーの違いについても再確認し、ヨーガを医療や一般社会の文脈でどう活用していくかを考え直す良い機会になりました。これからも学びを深めながら、ヨーガ教育およびヨーガ・セラピーの実践を続けていきたいと思います。
